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2024年05月10日
スリムビューティーハウス事件、降格配転、賃金減額、解雇

スリムビューティーハウス事件、降格配転、賃金減額、解雇

 

 

地位確認等請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成18年(ワ)第21895号

【判決日付】      平成20年2月29日

【判示事項】      1 エステティックサロンの経営等を行う被告Y社が複数の従業員らから言動について不満が寄せられていた原告エリアマネージャーを,本件店舗のマネージャーに配置転換するとともに,部長1級から次長1級への降格処分をしたことについて,総体的には原告の部下への接し方や指導監督の手法に問題があって,各店舗の人員確保なり業務の遂行に支障を生じるあるいは生じかねない事態が生じていたことが推認されるとして,本件降格処分にはそれなりの必要性と合理性が見て取れ,人事権の裁量の範囲内のものとして有効とされた例

             2 降格処分に伴う賃金減額につき,一般的には,当該減額が客観的なもので,就業規則の一部として労働契約の内容になっているものに従って減額後の賃金が算定されている限りにおいては,一定の合理性のあるものとして肯定できるとされた例

             3 本件降格処分に伴う年俸減額(1150万円から690万円への減額)につき,本件においては会社の賃金体系が明示されておらず,その減額基準の客観性および合理性は明らかではないこと,また,年俸額の4割を超える減額が本件降格に伴う減額幅としては過大であることなどから,賃金減額の合理性が否定され,本件降格が有効であるとしても,Y社による減額の合理性,客観性(公平性)が基礎づけられていない以上,本件訴訟上は従来の給与水準による賃金債権が認容されるのも致し方ないとして,減額前の賃金水準による賃金請求権が認められた例

             4 上記降格および賃金減額の後になされたさらなる降格・賃金減額につき,原告の部下への接し方や指導監督の手法が改められていない状況が見受けられるものの,Y社は同人にその問題性を明確に指摘したうえで勤務なり仕事の進め方についての指導を行うべきところ,配置転換をして当該労働者の行動を見守る対応に終始し,本件配転が功を奏していない等の実情にかんがみれば,さらなる降格・賃金減額には合理性がないとされた例

             5 4のさらなる降格・賃金減額後になされた解雇につき,当該降格・賃金減額の有効性には疑問があること,労働者に対して示された従業員からの苦情について原告の言い分が食い違う状況にあること,原告が体調を崩して休業している状況にあること,そのような状況下でY社は原告に退職勧奨をし,これに応じなかったことから当該解雇の意思表示をしたものであることからすると,本件解雇はそれに先立って行われた降格・賃金減額に続いてあまりにも性急にすぎるものであるとして,本件解雇が無効とされた例

             6 原告につき,17年5月の降格後の職位(次長1級)としての労働契約上の地位が確認され,また当該降格に伴う賃金減額前の賃金と既払額との差額464万余円および本件解雇後の賃金支払いが認められたが,慰謝料請求については,Y社に嫌がらせ等の事実は認められない等として退けられた例

【掲載誌】        労働判例968号124頁

 

 

労働契約法

(懲戒)

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

 

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