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2024年03月24日
チョコエッグ事件・応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの

チョコエッグ事件・応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの

テーマ:美術の著作物
応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を有するに至っているため、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価される場合は、「美術の著作物」として、著作権法による保護の対象となる場合があるものと解するのが相当である

大阪高等裁判所判決/平成16年(ネ)第3893号

平成17年7月28日

違約金等本訴請求,不当利得返還反訴請求控訴事件

【判示事項】 応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を有するに至っているため、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価される場合は、「美術の著作物」として、著作権法による保護の対象となる場合があるものと解するのが相当である

【参照条文】 著作権法2-1

       著作権法10-1

【掲載誌】  判例タイムズ1205号254頁

       判例時報1928号116頁

著作権法

第二条

2 この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。

(著作物の例示)

第十条1項 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物

二 音楽の著作物

三 舞踊又は無言劇の著作物

四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物

五 建築の著作物

六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

七 映画の著作物

八 写真の著作物

九 プログラムの著作物

事案の概要

 1 本件は,「チョコエッグ」(チョコレートの中に入ったカプセルに精巧な動物等の模型(俗に「フィギュア」といわれる。)を封入した商品)などの菓子について,菓子業者と模型業者間に生じた紛争である。

 フィギュア製造業者であるXと菓子業者であるYは,フィギュア入り菓子を販売するに当たり,Xが各種のフィギュアの模型原型を製造し,Yに対して模型原型の著作権の使用を許諾し,Yは商品の製造販売個数に応じてロイヤルティを支払う旨の著作権使用許諾契約を締結していたが,YがXに対し製造販売個数を過少申告していたことが発覚したため,XがYに対してロイヤルティの2倍相当の約定違約金を請求したところ,Yが支払を拒否し,紛争が発生した。

 Xは,Yに対し,著作権使用許諾契約に基づき,未払のロイヤルティ及び違約金の支払を求めて本件訴訟を提起したところ,Yは,本件フィギュアの模型原型は,著作権法にいう著作物に該当しないから,著作権使用許諾契約は要素の錯誤により無効であるなどと主張して争った。

 なお,本件で問題になったフィギュアは,①実在の動物を,図鑑をもとに忠実に再現したもの(本件動物フィギュア),②空想上の妖怪を,江戸時代の絵師鳥山石燕の原画(角川ソフィア文庫刊『鳥山石燕・画図百鬼夜行全画集』に収録されており,容易に入手できる。)をもとに立体化したもの(本件妖怪フィギュア),③「不思議の国のアリス」等の登場人物を,原作のテニエルの挿絵に忠実に立体化したもの(本件アリスフィギュア)の3種類に分類される。

 2 原審(大阪地判平16.11.25判時1901号106頁)は,本件フィギュアの模型原型はいずれも著作物に該当しないと判断した(ただし,そうであるとしても要素の錯誤は成立しないとして,Xの請求の大部分を認容した)。

 これに対し,本件判決は,次のように判断して,本件妖怪フィギュアの模型原型につき著作物性を肯定した(なお,要素の錯誤については,原判決を引用して成立しないと判断した。)。

(1)美的創作物は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,制作者が,当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的で制作し,かつ,一般的平均人が,上記目的で制作されたものと受け取るもの(純粋美術)と,思想又は感情を創作的に表現したものであるけれども,制作者が,当該作品を上記目的以外の目的で制作し,又は,一般的平均人が上記目的以外の目的で制作されたものと受け取るものに分類することができる。いわゆる応用美術とは,後者のうちで,制作者が,当該作品を実用に供される物品に応用されることを目的(実用目的)として制作し,又は,一般的平均人が,当該作品は実用目的で制作されたものと受け取るものをいう。

 本件模型原型は,思想又は感情を創作的に表現したものではあるけれども,制作者が,当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的ではなく,実用目的で制作したものであり,かつ,一般的平均人が,実用目的で制作されたものと受け取るものというベきであるから,応用美術に該当する。

(2)応用美術一般には著作権法による保護が及ばないが,実用性や機能性とは別に,独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を有するに至っているため,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価される場合は,「美術の著作物」として,著作権法による保護の対象となる場合がある。

 本件妖怪フィギュアは,江戸時代の絵画を原画とするものについても,随所に制作者独自の解釈,アレンジが加えられているなど,高度の創作性が認められ,また,極めて精巧なものであり,一部のフィギュア収集家の収集,鑑賞の対象となるにとどまらず,一般的な美的鑑賞の対象ともなるような,相当程度の美術性を備えているということができる。本件妖怪フィギュアに係る模型原型は,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから,応用美術の著作物に該当する。

 しかし,本件動物フィギュア及び本件アリスフィギュアは,現実の動物や,原作の挿絵を忠実に再現,立体化したものであり,制作者の個性はさほど反映しておらず創作性の程度は低いから,応用美術の著作物に該当しない。

 3(1)著作権法は,美術の著作物に関しては「美術工芸品を含む」と規定するのみである(2条2項)ことから,いわゆる応用美術の定義及びその著作物性については以前から議論があったところである。

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