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2023年05月14日
権利能力なき社団とは、その3 登記法分野

権利能力なき社団とは、その3

登記法分野

 

 

不動産登記

登記の可否

団体名義の登記で述べた基本判例が出る以前から、登記実務では権利能力なき社団名義での登記はできないとされている(1947年(昭和22年)2月18日 民甲141号回答)。また、社団の代表者である旨の肩書きを付した代表者個人名義の登記も基本判例により許されないとされたが、登記実務では判例以前からできないとされている(1961年(昭和36年)7月21日 民三635号回答)。

 

登記は、代表者個人名義または権利能力なき社団の構成員全員の共有名義でするというのが登記実務である(1948年(昭和23年)6月21日 民甲1897号回答)。なお、代表者でない個人名義でも登記できるとした判例がある(最判 平成6年5月31日民集48巻4号1065頁)。この判例によると、代表者でない個人名義で登記をすることができるのは、その個人が所有権登記の管理に関する権限を全構成員から委任されているためであるという。

 

また、仮処分登記名義人(登記研究457-120頁)、仮差押登記名義人(登記研究464-116頁)、信託登記の受益者(1984年(昭和59年)3月2日 民三1131号回答)としても権利能力なき社団は登記できない。

 

一方、権利能力なき社団は抵当権などの債務者としては登記できる(1956年(昭和31年)6月13日 民甲1317号回答)。債務者は登記名義人ではなく登記事項の一つにすぎないからである(不動産登記法83条1項2号)。同様に個人の商号も、例えば「債務者 何市何町何番地 A商店」のように登記できる(同先例)。

 

ただし、権利能力なき社団を債務者とする不動産工事の先取特権保存登記を申請することはできない(登記研究596-87頁)。不動産工事の先取特権には物上保証のような性格はないからである。

 

 

代表者の交替

なすべき登記

権利能力なき社団の代表者個人名義で所有権登記されている不動産につき、代表者が死亡・更迭などにより交代した場合、判例は、登記更正や氏名変更の手続きによって所有権登記名義を書き替えるのではなく、権利移転の手続きによって所有権登記名義を書き替えるべきであるとしている。登記実務では当該判決が出る以前から権利移転の手続きによるとしている(1966年(昭和41年)4月18日 民甲1126号回答)。登記原因は「委任の終了」であるが、所有権そのものを委任されていたという意味ではなく、所有権登記の管理に関する委任が終了したという意味である。

 

なお、権利能力なき社団が地方自治法260条の2第1項の認可を受けた場合になすべき登記については認可地縁団体を参照。

 

 

登記に関する実例

権利能力なき社団の代表者個人名義で登記されている不動産につき、当該代表者の死亡後当該社団が第三者にその所有権を譲渡した場合、現在の代表者の個人名義に所有権移転登記をしてから第三者名義に所有権移転登記をするべきである(1990年(平成2年)3月28日 民三1147号回答)。

 

権利能力なき社団の代表者個人名義で登記されている不動産につき、代表者の交代による所有権移転登記がされている場合、当該不動産は実質的には権利能力なき社団の所有に属すると推定されるので、当該不動産につき相続を原因とする所有権移転登記は原則として受理すべきでない(登記研究459-98頁)。しかし、当該不動産を代表者個人のものとした可能性もあり、その場合例えば代表者AからAへの所有権移転登記はすることができないので、結局相続登記が申請されれば受理せざるを得ない(登記研究572-75頁)。

 

権利能力なき社団の代表者個人名義で登記されている不動産につき、当該代表者を被相続人とする相続登記がされている場合、代表者の交代による所有権移転登記をするためには、前提として相続登記に対して所有権抹消登記をするのが相当である(登記研究550-181頁)。

 

 

登記申請情報(一部)

登記の目的(不動産登記令3条5号)は、代表者がAからB又はB・Cに交代した場合、「所有権移転」とする。AからA・Bに交代した場合、「所有権一部移転」とする(1978年(昭和53年)2月22日 民三1102号回答)。A・BからA又はA・Cに交代した場合、「B持分全部移転」とする。A・BからC又はC・Dに交代した場合、「共有者全員持分全部移転」とする。なお、A・BからA・B・Cに交代した場合、「A持分一部移転」又は「B持分一部移転」または「A持分何分の何、B持分何分の何移転」とする(登記研究546-153頁参照)。

 

登記原因及びその日付(不動産登記令3条6号)のうち、登記原因は「委任の終了」である(1966年(昭和41年)4月18日 民甲1126号回答・1978年(昭和53年)2月22日 民三1102号回答)。日付は原則として新代表者選任の日であり、登記申請の日ではない(登記研究450-127頁・573-124頁)。ただし、代表者がA・BからAのように交代した場合、Bが退任等した日である。

 

そして、原因と日付を併せて「平成何年何月何日委任の終了」のように記載する。

 

登記申請人(不動産登記令3条1号)は、所有権を得る新代表者を登記権利者とし、失う旧代表者を登記義務者として記載する。なお、新代表者が2人以上いる場合は持分の記載も必要である(不動産登記令3条9号本文)。一方、#団体名義の登記で述べた基本判例は、代表者の交代による手続きは信託における受託者の更迭の場合に準ずるとしており、それに従うなら持分の記載はできないことになる(不動産登記令3条9号かっこ書参照)。

 

添付情報(不動産登記規則34条1項6号、一部)は、登記原因証明情報(不動産登記法61条・不動産登記令7条1項5号ロ)、登記義務者の登記識別情報(不動産登記法22条本文)または登記済証及び書面申請の場合には印鑑証明書(不動産登記令16条2項・不動産登記規則48条1項5号及び同規則47条3号イ(1)、同令18条2項・同規則49条2項4号及び同規則48条1項5号並びに同規則47条3号イ(1))、登記権利者の住所証明情報(不動産登記令別表30項添付情報ロ)である。

 

一方、代表者の選任に関する議事録や権利能力なき社団の規約の添付は要求されていない(登記研究449-88頁)。また、移転登記の対象が農地であっても、農地法3条の許可書(不動産登記令7条1項5号ハ)の添付は不要である(1983年(昭和58年)5月11日 民三2983号回答)。

 

登録免許税(不動産登記規則189条1項前段)は、不動産の価額の1,000分の20である(登録免許税法別表第1-1(2)ハ)。なお、端数処理など算出方法の通則については不動産登記#登録免許税を参照。

 

 

 

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