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2022年09月09日
コース別人事と男女差別―巴機械サービス事件第1審判決

 

なお、本件では、控訴審でえある東京高判令和4年3月9日判例集未登載があります。

 

 

【判例番号】      L07650198

             未払賃金等請求事件

【事件番号】      横浜地方裁判所判決/平成30年(ワ)第715号

【判決日付】      令和3年3月23日

【判示事項】      1 被告Y社が本件コース別人事制度を導入して以降,令和2年5月までに採用された総合職全員が男性である一方,一般職は全員女性であることからすれば,男性を総合職,女性を一般職として男女で賃金や昇格等につき異なる取扱いをしているとの疑念を抱かせるものであり,同制度の運用面での女性に対する差別的取扱いの有無を検討する必要があるとされた例

             2 Y社が総合職の採用方針として現業経験の有無等を重視していることは差別的取扱いに当たらず,原告Xらの一般職としての採用にも合理的理由が認められるとされた例

             3 Y社の制度上は一般職から総合職への転換が可能であるものの,従前,かかる転換が実施されず,男女の異別取扱いへの疑念を抱かせる状況が継続していることからすれば,かかる取扱いに合理的理由が認められない場合には,総合職を男性,一般職を女性とする現状を固定化するものとして,職種変更について性別を理由とした差別的取扱いを禁止する雇用機会均等法6条3号に違反するか,雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保を図ることを目的とした同法1条の趣旨に鑑みて違法な男女差別に当たるとされた例

             4 Y社が総合職転換を希望するXらに対して,そのための具体的基準等を示したことはなく,かえってY社社長が女性に総合職はない旨の発言をしていることからすれば,Y社は女性であることを理由としてXらに総合職への転換機会を与えていないものと強く推認されるうえ,適切な人材が現れなかったために職種転換制度を運用したことがなかったとするY社の主張が信用しがたいこと等からすれば,Y社がXらに総合職転換の機会を与えなかったことには合理的な理由が認められず,Y社のかかる対応は違法な男女差別に当たるとされた例

             5 総合職としての採用・職種転換を認めるかはY社の裁量に属するため,自らが総合職であることを前提に,男性総合職が得ていた職能給の平均額とXらに支払われた職能給の差額を未払賃金・損害賠償として請求するXらの主張には理由がないものの,諸般の事情を総合考慮して,Xらが男女差別により被った精神的苦痛に対する慰謝料は各100万円を下らないとされた例

【掲載誌】        労働判例1243号5頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      ジュリスト1563号4頁

             労働判例1250号88頁

             労政時報4021号16頁

             季刊労働法276号167頁

             経営法曹212号101頁

 

       主   文

 

 1 被告は,原告X1に対し,100万円及びこれに対する平成30年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 被告は,原告X2に対し,100万円及びこれに対する平成30年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 3 原告両名のその余の請求をいずれも棄却する。

 4 訴訟費用は,原告X1に生じた費用の5分の3及び被告に生じた費用の5分の2を原告X1の負担とし,原告X2に生じた費用の5分の3及び被告に生じた費用の5分の2を原告X2の負担とし,原告X1に生じたその余の費用,原告X2に生じたその余の費用及び被告に生じたその余の費用を被告の負担とする。

 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 1 原告X1及び原告X2が,被告において,被告給与規定第11条1項の総合職としての労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

 2 被告は,原告X1に対し,489万1016円及びこれに対する平成30年3月10日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

 3 被告は,原告X2に対し,442万8176円及びこれに対する平成30年3月10日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

 4 被告は,原告両名に対し,各100万円及びこれらに対する平成30年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

   本件は,遠心分離機のメンテナンスや設置等を業とする株式会社である被告に入社した女性である原告両名が,被告に対し,自らが一般職とされ,総合職である男性従業員との間に賃金格差が生じていることについて,一般職と総合職の区別は性別のみであるから,この取扱いを定めた被告給与規定及びこれに基づく賃金制度が労働基準法4条に違反し,また,被告が採用段階において,原告両名が女性であることのみを理由に一般職に振り分け,総合職への転換を事実上不可能にしていることが,いずれも雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「雇用機会均等法」という。)に違反すると主張して,①原告両名が総合職の地位にあることの確認,②原告両名が総合職であれば支払われたはずの賃金と実際に支払われた賃金との差額について,主位的に労働契約に基づく未払賃金請求として,予備的に不法行為に基づく損害賠償請求として,原告X1につき合計489万1016円,原告X2につき合計442万8176円及びこれらに対する平成30年3月10日(訴状送達の日の翌日)から商事法定利率(平成29年法律第44号及び同第45号による改正前のもの。以下同じ。)年6分の割合による遅延損害金の各支払を求めるとともに,③原告両名は違法な男女差別により経済的,身分的な不利益を受け,精神的苦痛を被ったと主張し,不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料各100万円及びこれらに対する平成30年3月10日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。

 

 

[根拠条文]

 

労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

施行日:

令和二年四月一日

(令和二年法律第十三号による改正)

未施行あり(男女同一賃金の原則)

第四条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

 

 

 

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)

施行日: 令和二年六月一日

(令和元年法律第二十四号による改正)

 

(性別を理由とする差別の禁止)

第五条 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

第六条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。

一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練

二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの

三 労働者の職種及び雇用形態の変更

四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新

 

 

 

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