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相続の解説
法定相続人・法定相続分
配偶者は常に相続人となります。
  1. 第1順位 子(子が死亡している場合などは、孫。孫が死亡している場合には、ひ孫)
  2. 第2順位 父、母(父母ともに死亡している場合には祖父母)
  3. 第3順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合には甥、姪。ただし、甥、姪の子供の再代襲はありません)
  1. 第2順位は、第1順位の人が1人もいない場合に相続します。
  2. 第3順位は、第1順位、第2順位の人が1人もいない場合に相続します。
組合せと相続人 配偶者 父母 兄弟姉妹
配偶者と子 1/2 1/2 なし なし
配偶者なし、子 × 全部 なし なし
配偶者と父母 2/3 × 1/3 なし
配偶者と兄弟姉妹 3/4 × × 1/4
配偶者のみ 全部 × × ×
また、子など同一順位の相続人が複数いる場合には、頭数で均等割りになります。
また、代襲相続の場合には、被代襲相続人の受けるべき法定相続分を代襲相続人の均等割りにします。
ただし、半血(片親のみ共通 の場合)の兄弟姉妹では、法定相続分が、両親共通 の兄弟姉妹の場合に比べて1/2になります
胎児
胎児は、相続については、既に生まれたものとみなされ、相続人となります。
ただし、死産のときは、相続人になりません(民法886条)。
内縁の妻
相続人になりません。
ただし、相続人が誰もいない場合に限って、特別縁故者として、相続財産の分与を家庭裁判所に申し立てることができます。
また、借家などで、相続人がいる場合に、賃借人である被相続人が死亡した後も、内縁の妻が引き続き居住する場合には、相続人の賃貸借契約を援用して、賃貸人に対抗できます。
相続人がいない場合には、事実上の配偶者または事実上の親子は借家として居住することができます(借地借家法36条)。
相続人の欠格事由
次に掲げる者は、相続人となることができません(民法891条)。
  1. 故意に被相続人又は相続について先順位 ・同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別 がないとき、又は殺害者が自己の配偶者・直系血族であるときは、この限りではありません
  3. 詐欺・強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺・強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
ただし、相続欠格事由に該当していても、代襲相続することができます(民法887条)。
したがって、親が亡くなって子が相続欠格事由に該当していても、孫は代襲相続することができます。
有利な遺言を破棄した相続人は相続欠格事由に該当しますか?
判例は、遺言書の破棄隠匿が、相続に関する不当な利益を目的としない場合は、相続欠格事由に当たらないとしています(最判平成9年1月28日)。
したがって、自己に有利な遺言を破棄した相続人は、相続欠格事由に該当しません。
相続させないことは可能ですか?
  1. 遺言で特定の相続人には相続させない方法 遺言で特定の相続人にのみ相続させ、又は相続分を指定して、他の特定の相続人には相続させない方法があります。
    ただし、兄弟姉妹を除く相続人には遺留分がありますので、遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求権を行使して、自己の最低限受け取るべき分(遺留分)を確保することができます。もっとも、遺留分は被相続人の生前から放棄することができますので、遺留分を放棄させておくことによって、相続させないことが可能です。遺留分放棄に対して、相続放棄は、被相続人の生前にはできません。
  2. 被相続人に対して虐待、重大な侮辱を加えた場合その他推定相続人に著しい非行があった場合には、被相続人は、推定相続人の相続権を失わせる「廃除」を家庭裁判所に請求できます(民法892条)。また、遺言で廃除する旨の意思表示をしておき、相続開始後に、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の申立をすることもできます(民法893条)。
    もっとも、廃除は、相続権を失わせるという重大な法的効果 をもたらすものですから、はなはだしい失行があったとしても、一時の激情からした場合には廃除事由に該当しません(大判大正11年7月25日)。
    ただし、廃除していても、代襲相続の適用があります(民法887条)。したがって、親に廃除された子の孫は、代襲相続することになります。
    また、被相続人は生前に廃除の取消しをいつでも家庭裁判所に請求することができますし、遺言で廃除の取消しを定めておき相続開始後に遺言執行者が家庭裁判所に申し立てることができます(民法894条)。
  3. 配偶者が推定相続人の場合には、離婚することによって、法定相続人でなくなります。
  4. 養子縁組した場合には、離縁することによって、相続人でなくなります(特別養子を除く)。
    ただし、世間では、「親子や兄弟の縁を切る」という言葉が存在しますが、血縁関係の場合には、「縁を切る」ということは法律上できません。
相続財産
遺骨の所有権は?
遺骨は、祭祀の承継人の所有に帰属します。
例えば、親(祖父母)、配偶者(父親)、子がいる場合に、片方の配偶者(母親)が死亡した場合には、配偶者(父親)及び子が遺骨の所有権があります。親(祖父母)には、遺骨の所有権はありません。
香典は相続財産に含まれますか?
香典は喪主に対する贈与と考えられており、相続財産に含まれません。
同様に、香典返しも、相続財産に含まれないと考えられます。
被害者が交通事故で即死の場合の損害賠償請求権は相続されますか?
被害者が即死した場合に、相続を考えることができないようにも思われますが、判例は、観念上被害者に損害賠償請求権が成立し相続される(大判大正15年2月16日)などの理由により、相続されると説明しています。
生命保険・傷害保険の保険金は相続財産に含まれますか?
保険金受取人の指定が相続人となっている場合・約款で保険金受取人が相続人とされている旨が定められている場合であっても、生命保険・傷害保険の保険契約の効力発生と同時に、相続人の固有財産となり、相続財産となりません(生命保険につき最判昭和40年2月2日、傷害保険につき最判昭和48年6月20日)。また、特段の事情がない限り、特別受益、遺留分減殺の対象にもなりません(最決平成16年10月29日)。
ただし、相続税の計算の上では、保険金も相続財産として扱われ、みなし相続財産と呼ばれています。
死亡退職金は相続財産に含まれますか?
死亡退職金の受給権は相続財産に属さず、受給権者たる遺族が、自己固有の権利として取得するとするのが判例です(最判昭和55年11月27日)。
公営住宅の使用権は当然に相続されますか?
公営住宅は、公の目的で設置され一定の条件の下に使用が許可されるものですから、通常の借家権と異なり、公営住宅の入居者が死亡した場合には、その相続人は、使用権を当然に承継するものではありません(最判平成2年10月18日)。
借地・借家の相続の場合に名義書き換え料を請求されましたが?
借地権・借家権は、当然に相続の対象となります。
したがって、名義書き換え料を請求される理由はないと言えます。
世上、借地契約の相続に当たって、名義書き換え料を請求されたなどと聞きますが、支払う必要はありません。
祭祀に関する権利
系譜、祭具、墳墓の所有権は、慣習又は被相続人の指定にしたがって、祖先の祭祀を主催すべき者が承継します。
慣習が明らかではない場合には、家庭裁判所が定めます(民法897条)。
したがって、墓の所有権などは、相続、遺産分割、遺留分とは関係ありません。
同居相続人が被相続人の建物を無償で使用しているが?
共同相続人の1人が相続開始前から、被相続人の許諾を得て、遺産である建物に被相続人と同居していた場合には、被相続人死亡から少なくとも遺産分割終了時までの間は、被相続人の地位 を承継した他の相続人を貸主、同居相続人を借主とする無償使用貸借契約があるとされています(最判平成8年12月17日)。したがって、他の共同相続人は、同居相続人が被相続人の建物を無償で使用することを拒否することはできません。
預金債権はどうなりますか?
遺産分割の対象になります。
金銭は当然に分割されますか?
相続開始時にある金銭を相続財産として保管している他の共同相続人に対して、遺産分割までの間、自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません(最判平成4年4月10日)。金銭は、可分債権と異なり、動産として扱われる(民法86条2項)からです。
借入金債務はどうなりますか?
借入金債務は、可分債権といって、その性質上分割しても問題がない性質の債権ですから、共同相続人は、法定相続分に応じて、当然に分割され、相続します。
遺産分割協議で資産に応じた負債を承継する旨を定めることがありますが、借入金の場合には、当然に分割されて相続されますので、債権者の同意がない限り、当然には債務の負担を免れることができません。なお、限定承認をした場合には資産の範囲内でのみ弁済すれば足ります。また、相続放棄をした場合には、最初から債務を相続しません。
身元保証契約は相続されますか?
身元保証契約は一身専属性のものと解されています。
そこで、例えば、親が甥の就職に当たり勤務先の会社に対して身元保証契約をした場合では、甥が会社のお金を横領したような場合の損害賠償しなければならない場合について、その親の子供は、いとこである甥の身元保証契約を相続しません。ただし、被相続人の生前に既に損害賠償請求権が具体化していた場合には、損害賠償債務を法定相続分に応じて、当然に分割相続します。
連帯保証契約は相続されますか?
責任の限度額・保証期間の定めがある場合には、連帯保証契約は相続されます。
責任の限度額につき相続人の法定相続分に応じて分割され(可分債務)、相続人は、相続分に応じた金額を主債務者と連帯して支払う義務があります(最判昭和34年6月19日)。
これに対して、責任の限度額及び保証期間の定めのない継続的売買取引についての連帯保証契約は、一身専属性のものと解され、相続の対象とはなりません(最判昭和37年11月9日)。ただし、被相続人の生前に具体的な保証債務額が生じていた場合には、その保証債務額を法定相続分に応じて分割された債務を相続し、本来の主債務者と連帯して支払う義務があります
特別受益
被相続人から婚姻・養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与・遺贈を受けた場合、相続開始時の相続財産にその価格を加えたものを相続財産とみなして、相続分を算定します。
特別受益を受けた者の相続分は特別受益を控除した残額を相続分と算定します(民法903条)。
子供が親からマイホームの購入資金の贈与を受けたり、事業資金の援助を受けたり、相続人中で特に1人だけ大学に行ったりした場合の学費等の場合をいいます。
日常的な小遣い、誕生日プレゼント等は含みません。
ただし、被相続人が、特別受益について民法と異なる意思表示(遺言によっても可能です)をした場合には、遺留分を侵害しない限度で、その効力を有します(民法903条3項)。
特別受益の贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときでも、相続開始の時になお原状のままあるものとみなして、これを算定します(民法904条)
寄与分
被相続人の事業に関する労務の提供、財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別 の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始時点において有した相続財産の価格から寄与分を控除したものを相続財産とみなして、各自の法定相続分を算定します(民法904条の2)。寄与分の算定は、まずは共同相続人の協議により定め、協議がととのわないときは、家庭裁判所に調停の申立をします。調停で決まらない場合には家事審判となります。
遺産分割
共同相続人は、被相続人が遺言で禁止した場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができます(協議分割)。
協議がととのわない場合又は協議をすることができない場合は、家庭裁判所に対して、遺産分割協議の調停を申立て、調停で協議が成立すれば、それで遺産分割協議が成立します(調停分割)。調停が不調であれば遺産分割審判(審判分割)に移行します(民法907条)。
遺言で遺産分割の方法を定めること等ができます。
被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始時から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁じることができます(民法908条)。
遺産分割の効力
遺産分割の効力は、相続開始時にさかのぼってその効力を生じます。
ただし、第三者の権利を害することはできません(民法909条)。
遺産分割の方法
遺産分割の方法としては、以下の方法があります。
現物分割(遺産を現物で分割する方法)
代償分割(遺産の対象物を特定の相続人が相続し、代わりに他の相続人に金銭を与える方法)
換価分割(遺産の対象物を売却して代金を分割する方法)
相続開始後に認知された者の価額の支払請求権
相続の開始後、認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に分割その他の処分をした場合には、価額のみによる支払の請求権を有します(民法910条)。
ただし、認知以外の場合に、本来相続人である者をのけ者にして遺産分割をした場合は、遺産分割は無効となります。
相続の3つの方法
相続には3つの方法があります。
1.単純承認
被相続人の有した権利義務をそのまま相続することです。
次の場合には、法定単純承認といって、限定承認・相続放棄をした場合であっても、被相続人の権利義務を相続します。
  1. (1)相続人が相続財産の全部又は一部を処分した場合。ただし、保存行為及び民法602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りではありません。
  2. (2)相続人が相続開始時から3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかった場合
  3. (3)相続人が、限定承認又は相続放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産目録中に記載しなかった場合。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りではありません。
2.限定承認
相続開始を知った時から3ヶ月以内に、被相続人の積極財産(資産)の範囲内でのみ、消極財産(負債)を支払う旨を家庭裁判所に申述する方法です(民法922条、915条)。
相続人が数人いる場合には、限定承認は、共同相続人全員が共同してのみすることができます(民法923条)。
3ヶ月以内に相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認する旨を申述し(民法924条)、限定承認をした後5日以内に、全ての相続債権者及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内(2ヶ月以上)に請求の申し出をすべき旨を公告しなければなりません(民法927条)。相続人が数人いる場合には、共同相続人の中から相続財産管理人が家庭裁判所によって選任され、相続財産管理人の選任後10日以内に公告をしなければなりません(民法936条)。
3.相続放棄
相続開始を知った時から3ヶ月以内に、全部相続しない旨を家庭裁判所に申述する方法によって、相続しないこととするものです(民法915条、938条)。
相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
限定承認と異なり、共同相続の場合であっても、単独ですることができます。
被相続人にかなり借金があることがわかりました。どうすればよいですか?
被相続人に資産があるのであれば、積極財産の範囲内でのみ弁済する限定承認の方法が得策と言えます。
ただし、共同相続の場合には、全員で限定承認することが必要です(民法923条)。
また、相続放棄をすることもできます。
家庭裁判所の実務では、「相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内という期間について、相続債務があったことが判明した時と解しており、被相続人の死亡から3ヶ月を過ぎていても、後から借金があったことが判明したような場合には、相続放棄をすることを認めています。配偶者と子が相続放棄をすれば、直系尊属がいない場合には、兄弟姉妹が相続人となり、兄弟姉妹が放棄したければ、相続放棄をすれば、債務を承継しないで済みます。なお、相続放棄は代襲相続の原因とはなりません(民法939条)。
相続しないことは可能ですか?
限定承認、相続放棄により相続しないことは可能です。相続人の債権者が、相続すれば相続財産を承継することができたはずであることを理由に、債権者取消権(民法424条)を行使することはできません(最判昭和49年9月20日)。相続放棄をすることは、一身専属的な権利だからです。
また、遺産分割により、共同相続人のうちの特定の相続人が相続しないことを定める協議を成立させることも可能です。
遺言
満15歳になれば、遺言をすることができます(民法961条)。
遺言が民法の定める方式に従っていない場合(民法960条)、遺言者に遺言能力がない場合(民法963条)、被後見人が、後見の計算終了前に、後見人又はその配偶者・直系卑属の利益となるべき遺言をした場合(直系血族、配偶者、兄弟姉妹が後見人である場合を除く)(民法966条)、2人以上の者が共同でした遺言(民法975条)には、遺言が無効となります。
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有します(民法990条)。したがって、包括受遺者と相続人とは、遺産については遺産分割協議をすることになります。
負担付遺贈
負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負います(民法1002条1項)。
例えば、「認知症のAの介護を見ること」という負担と引き換えに「土地建物を遺贈をする」ことが考えられます。
また、受遺者が遺贈の放棄をした場合には、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができます。
ただし、遺言者がその遺言に別段の意思表示をした場合は、その意思に従います(民法1002条2項)。
また、負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復(遺留分減殺請求)の訴えによって減少した場合には、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義務を免れます。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思表示をした場合は、その意思に従います(民法1003条)。
遺言書の検認
自筆証書、秘密証書の遺言書の保管者が相続があったことを知った後遅滞なく、家庭裁判所に検認を請求しなければなりません。
遺言書の保管者がなく相続人が遺言書を発見した場合も同様です。封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ開封することができません(民法1004条)。
遺言書の提出を怠り、検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外において開封をした者は、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。
遺言書の検認は、遺言の方式に関する一切の事実を調査して遺言書の状態を確定してその現状を明確にするものであって、遺言書の実体上の有効・無効を決めるものではありません(大決大正4年1月16日)。
遺言執行者
遺言で、遺言者は、1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができます(民法1006条)。
未成年者、破産者は、遺言執行者となることができません(民法1009条)。遺言執行者には、相続人、受遺者でも、なることができます。
  遺言執行者がない場合、又はなくなった場合には、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、遺言執行者を選任します(民法1010条)。
遺言執行者が就任を承諾した場合には、直ちにその任務を行わなければなりません(民法1007条)。
遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければなりません(民法1011条)。
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条)。
遺言の撤回
遺言者は、後の遺言によって、又は、生前処分その他の法律行為によって、いつでも、遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法1022、1023条)。
遺言者が故意に遺言書を破棄した場合は、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなされます
遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合も、同様です(民法1024条)。
撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至った場合でも、その効力を回復しません。
ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りではありません(民法1025条)。
例外的に、撤回の遺言が撤回され、遺言者が最初にした遺言を復活させようと希望したことが明らかな場合には、最初にした遺言が復活します(最判平成9年11月13日)。
もっとも、最初の遺言の復活と同じ効果 をあげようとすれば、新たな遺言をすれば済むのですから、このような紛らわしい方法を取るべきではないでしょう。
負担付遺言の取消し
負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しない場合は、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができ、期間内に履行がない場合は、その負担付遺贈にかかる遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法1027条)。
遺留分
生前贈与の場合、または遺言で法定相続分と異なる割合の相続・遺贈が決められた場合、子(または孫)、配偶者、直系尊属が相続人である場合には、直系尊属のみが相続人である場合には法定相続分の1/3、それ以外の場合には1/2を、遺留分として、遺留分を侵害した者に対して減殺することを、相続開始及び減殺すべき贈与・遺贈があったことを知った時から1年間以内(又は相続開始から10年以内に限り)に請求できます(民法1028条、1031条、1042条)。兄弟姉妹には、遺留分はありません。
遺留分の算定方法は、被相続人が相続開始時において有した資産の額+贈与した財産(相続開始前の1年間にした贈与及び当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与)の価額—債務の額で計算されます(民法1029条、1030条)。
遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び贈与の減殺を請求することができます(民法1031条)。
贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することはできません(民法1033条)。
贈与の減殺は、後の贈与から順次前の贈与に対してします(民法1035条)。
受遺者は、その返還すべき財産のほか、減殺の請求があった日以後の果実を返還しなければなりません(民法1036条)。
減殺を受けるべき受遺者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担となります(民法1037条)。
  負担付遺贈は、その目的の価額から負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求することができます(民法1038条)。
減殺を受けるべき受贈者は、遺留分権利者にその価額を弁償しなければなりません(平成30年改正民法1040条)。
受贈者・受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができます(民法1041条)。
もっとも、贈与・遺贈の目的物の現物を返還しても構いません。
減殺を受けるべき贈与・遺贈の目的物の価額の算定時期は、遺留分回復による価額弁償請求訴訟の事実審の口頭弁論終結時です(最判昭和51年8月30日)。
遺留分の放棄
相続開始前の遺留分放棄は、家庭裁判所の許可を得た場合に限り、有効です(民法1043条1項)。
相続開始後にする遺留分放棄は、特に方式の定めもなく、遺留分権利者が期間内に遺留分減殺請求をしなければ、遺留分の問題を生じません。
共同相続人の1人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません(民法1043条2項)。
したがって、他の相続人が遺留分を放棄したからといって、他の相続人の遺留分が増加するものではありません。
特別縁故者
相続人がいない場合において、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別 の縁故があった者について、相続財産管理人が選任された旨の公告をなし、その後2ヶ月以内に相続人のあることが明らかにならない場合に相続債権者及び受遺者に対する弁済請求申し出の2ヶ月以上の公告、その後、相続人の捜索の公告を6か月間以上なした後の、3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して、相続財産を与える旨の申立をします(民法958条の3)。
内縁の夫婦、事実上の養子等がこれに該当しますが、相続人がいる場合には、内縁の夫婦などには特別縁故者の適用がありませんので、遺言・生前贈与等で対処しておく必要があります。

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