第2章 改正の概要
新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、デジタル化、リモート・非接触など経済活動のあり方が大きく変化。このような変化に対応すべく、
(1)新型コロナウイルスの感染拡大に対応したデジタル化等の手続の整備、(2)デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した
権利保護の見直し、(3)訴訟手続や料金体系の見直し等の知的財産制度の基盤の強化、を柱に特許法等※の改正を行う。 ※特許法(特)、実用新案法(実)、意匠法(意)、商標法(商)、工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(工)、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律(国)、弁理士法(弁)
2.法律の概要
(1)新型コロナウイルスの感染拡大に対応したデジタル化等の手続の整備
① 審判口頭審理のオンライン化【特・実・意・商】
・ 特許の無効審判等は、従来、審判廷に出頭して対面で口頭審理。これを、審判長の判断でウェブ会議システムでも可能とする。
・ 特許料等の支払方法について、口座振込等による予納(印紙予納の廃止)や、窓口でのクレジットカード支払等を可能とする。
② 印紙予納の廃止・料金支払方法の拡充【工】
・ 手続期間の徒過により特許権等が消滅した場合に、権利を回復できる要件を緩和する。
③ 意匠・商標国際出願手続のデジタル化【意・商】
・ 意匠・商標の国際出願の登録査定の通知等について、(感染症拡大時に停止のおそれのある)郵送に代えて、国際機関を経由した電子送付を可能とするなど、手続を簡素化。
④ 災害等の理由による手続期間徒過後の割増料金免除【特・実・意・商】
・ 感染症拡大や災害等の理由によって特許料の納付期間を徒過した場合に、相応の期間内において割増料金の納付を免除。
(2)デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し
① 海外からの模倣品流入への規制強化【意・商】
・ 増大する個人使用目的の模倣品輸入に対応し、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を商標権等の侵害として位置付ける。
新たに商標権・意匠権侵害と位置づけようとする行為 現行法上、商標権・意匠権侵害となる行為
② 訂正審判等における通常実施権者の承諾要件見直し【特・実・意】
・ デジタル技術の進展等に伴う特許権のライセンス態様の複雑化に対応し、特許権の訂正等における通常実施権者(ライセンスを受けた者)の承諾を不要化。
意見
③特許権等が手続期間の徒過により消滅した場合に、権利を回復できる要件を緩和する。【特・実・意・商】
(3)知的財産制度の基盤強化
① 特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入【特・実・弁】
・ 複雑化した特許権侵害訴訟において、裁判所が広く第三者から意見を募集できる制度を導入。
・ 社会的影響の大きい事件において、裁判所が幅広い意見を踏まえて判断できるよう当事者の証拠収集を補完。
・ 弁理士が「第三者意見募集制度」における相談に応じることを可能とする。
② 特許料等の料金体系見直し【特・実・意・商・国】
・審査負担増大や手続のデジタル化に対応し収支バランスの確保を図るべく、特許料等の料金体系を見直す。【特・実・意・商・国】
③ 弁理士制度の見直し【弁】
・特許権侵害訴訟において、裁判所が広く第三者から意見を募集できる制度を導入し、弁理士が当該制度における相談に応じることを可能とする。【特・実・弁】
・弁理士制度に関して、農林水産関連の知的財産権(植物の新品種・地理的表示)に関する相談等の業務について、弁理士を名乗って行うことができる業務として追加するとともに、法人名称の変更や一人法人制度の導入といった措置を講ずる。【弁】
・ 法人名称の変更
(「弁理士法人」への変更)
・ 一人法人制度の導入