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2024年06月11日
宅地建物取引業者の説明義務6 第6章 差押え・処分禁止の仮処分の登記

第6章 差押え・処分禁止の仮処分の登記

東京地判平成16年6月28日LLI/DB 判例秘書登載
原告は、被告との間で被告の紹介した本件建物に関する仲介契約を締結し、原告は被告に対し金員を支払ったが、本件建物は競売により訴外有限会社に売却され、被告は原告に対し、本件建物の引渡しができなくなったため、原告は被告に対し、本件仲介契約の債務不履行に基づいて損害賠償を求めた事案で、原告は被告の仲介契約の債務不履行により損害を受けたとして、原告の請求を認容した事例

名古屋高判昭和36年3月31日高民集14巻3号213頁
揚妻が代表取締役をしている観光会社(親立観光株式会社)ば、別紙目録記載の宅地建物を所有し、これを使用して旅館金岡荘を経営していたが、その親会社なる株式会社親立総本社(その代表取締役は前記揚妻)が多額の債務を負担して破産宣告を受け、その破産管財人は、観光会社を相手方として、右宅地建物につき、売買、譲渡、質権抵当権賃借権の設定その他の一切の処分を禁止する仮処分をし、昭和33年8月16日その旨の登記がなされた。
宅地建物取引業者は、本件のように宅地または建物買受の媒介の委託を受けて特定の不動産につきその媒介をするにあたっては、委任者より特段の指示がない場合においても、みずからまたは司法書士等に依頼して登記簿を閲覧しまたはその謄本等の交付を受けて登記簿上の所有者を了知しかつ競売、仮処分、質権、抵当権、賃借権等の登記の存否を確認し、その他諸般の方法により、右不動産の主要な法律関係を調整し、その結果を委任者に告知し、もって委任者が右の法律関係を知らないで買受契約をし取引に過誤を生じて不測の損害を蒙るに至るべきことを未然に防止するよう注意をなすべき義務があるといわなければならない。常に必ず登記簿の取調を要すると断定することはできないけれども、登記簿は不動産の法律関係を公示することを目的として備え付けてある国家の公簿であり、しかもその取調はたやすくなし得る事柄であるから、法律関係調査の方法としては、通常の場合は、まず登記簿の取調をなし、次で適宜その他の種々の取調方法をも考慮すべきであろう。本件についてこれをみるに、前記認定によって明かであるように、被控訴人は、10月20日ころより同月27日ころまでの間において媒介の目的不動産たる本件宅地建物の登記簿を容易に取り調べることができたにもかかわらず、全然これが取調をなさず、同月27日夕刻山口等の発議により、ようやく平松司法書士に電話をかけて登記簿の閲覧方を依頼したにすぎない。しかも、翌28日には被控訴人は、右司法書士に連絡して登記簿閲覧の結果を聴取するような措置に出でず、同日午後漫然と契約締結の席に立ち会って山口歓をして本件買受契約を締結し手附金70万円を支払うに至らしめたものである。登記簿の取調をすれば、前記仮処分のあることをたやすく発見することができたことはいうまでもない。なお、被控訴人が仮処分を発見し得るような他の適切な取調方法を採用した事実を推認するに足る証拠は存在しない。揚妻は仮処分のあることを告知しないで売渡契約を締結し詐欺行為により手附金70万円を領得したのであるが、登記簿取調の結果等によりあらかじめ仮処分のあることを了知するにおいては、山口は買受契約を締結せず手附金70万円を支払うに至らなかったに相違ない。このことは叙上の認定事実と取引の通念に照して明白である。そして観光会社が支払不能の状態にあって右金70万円を返還することができないことは前記説示のとおりである。これを要するに、被控訴人は、単に登記簿の取調をするだけで控訴会社が損害を蒙ることを容易に防止することができたにもかかわらず、受任事務の処理上当然に尽すべき注意を欠き、過失によって右の程度の取調すらせず、その結果控訴会社に損害を蒙らせるに至ったものである。しかしながら、控訴会社の代表者たる山口もまた、容易になし得る登記簿の取調すらせず、被控訴人等にその取調方の指示もせず、10月28日午前中に契約を締結すべく予定して、その前日なる27日夕刻に至ってようやく被控訴人をして平松司法書士に電話をかけさせたにすぎない。しかも18日には山口は、みずからまたは被控訴人等に指示して右司法書士より登記簿閲覧の結果を聴取するような措置をとらず、被控訴人を軽信して漫然と契約を締結し手附金70万円を支払い、その結果控訴会社が損害を蒙るに至ったのである。控訴会社が不動産の売買を営業とする株式会社であり、山口が以前から不動産売買の経験を有し苅谷等と共に控訴会社を設立してその代表取締役に就任した者であることは前記のとおりである。されば山口は、通常人に比すれば、不動産の法律関係調査の方法等に精通しており、しかも控訴会社の役職員に命じまたは取引先等に依頼して容易にその調査にをなし得る立場にあったものとみることができる。しかるに登記簿の取調すらせず、その後仲介人にこれが取調を指示しながら取調の結果の報告を督促せずこれを聴取しないで契約を締結し被控訴人を軽信して「仲介人まかせ」にしておいたのであるから、軽卒であったと非難されてもやむを得ないところであろう。控訴会社の代表取締役たる山口も、また、取引上通常用うべき注意を怠り、過失によって控訴会社に損害を生ぜしめたものである。上記のとおりであって、被控訴人の過失と山口の過失とが競合し、これに基因して控訴会社に金70万円の損害が発生したのであるから、山口の過失をしんしやくし、5割過失相殺。

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