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2024年04月27日
会社法の令和元年改正6-5 第5章 成年被後見人等の取締役等の欠格事由からの削除

第5章 成年被後見人等の取締役等の欠格事由からの削除等

旧法では、成年被後見人及び被保佐人(以下「成年被後見人等」)であることは、株式会社の取締役、監査役等の欠格事由とされていますが、成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく制度利用促進の政策の一環として、今回の改正で上記を欠格事由とすることをやめ、これに代わる規律をおくこととされました。

 

①成年被後見人等も取締役等に就任し得ることを前提に、以下の就任要件を規定(改正法第331条の2第1項、第2項)

成年被後見人が取締役等の就任するためには、成年後見人が法定代理人として就任の承諾をしなければならず、かつその承諾をなすことについて成年被後見人の同意(後見監督人がある場合はその同意も)を得なければならない。

被保佐人が取締役等に就任するには、保佐人の同意を得なければならい。

②成年被後見人又は被保佐人がした取締役等の資格に基づく行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない(同条第4項)

新設された規定自体はシンプルですが、行為能力に関する民法の規律との関係で、以下のような意味合いを含んでいます。

 

1)後見人は、被後見人の財産に関する法律行為について代理権を有するが(民法第859条第1項)、かかる代理によらず成年被後見人自身が法律行為をなすことは可能であり、その法律行為は取り消すことができる(民法第9条)。この民法の規律を取締役等の就任行為に持ち込むと、成年被後見人自身によって(成年後見人の代理によらず)なされた就任承諾は一旦有効でありながら後日取り消し得ることとなり、取り消されてしまうと、同人が代表取締役として行った第三者との取引行為や、同人が参加した取締役会決議の効力が覆されてしまうおそれがある。このような懸念を排除するため、取締役等の就任は成年後見人が代理して承諾しなければならないものとした(本人自身による就任承諾は無効である解釈を前提とする。)。

 

2)被保佐人の取締役等就任も、被保佐人の同意を要する行為と解され(民法第13条第1項第3号)、かかる同意を得ずになされた就任承諾は取り消し可能と解される(同第4項)。このため、取締役等の就任承諾に保佐人の同意を要するものとした(条文上明記されていないが、かかる同意がない就任承諾は無効であり、有効であるが後から取り消せるという規律を適用しないことを前提とする。)。

 

3)取締役等の就任行為は、民法上、成年被後見人の「行為を目的とする債務を生ずべき場合」(民法第859条第2項、第824条)に該当し、成年後見人が代理権を行使するに際して本人の同意を要する行為と解されるため、かかる同意の必要性を会社法上も明記した

 

4)上記の規律に従って就任した成年被後見人等による、取締役等としての職務執行行為が、民法の規律によって取り消し得ることとなると、法的安定性を害する。また、取締役等の職務執行の効果は株式会社に帰属するものであり、取り消しにより成年被後見人等の保護を図る必要性も低い。そのため、成年被後見人等の取締役等の資格に基づく行為を行為能力の制限によって取り消すことはできないものとした。

 

なお、職務執行における後見人等の関与の可否、取締役等としての責任についての考え方、取締役等を辞任する場合の規律などの論点がありますが、本稿では割愛します。

 

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