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2019年11月06日
山本隆司『判例から探究する行政法』有斐閣・2012年

著者は東京大学教授。
2002年から2010年までに言い渡された最高裁判例を解説した「法学教室」連載に,判例評釈を加えた,30件の判例解説。2004年の改正行政事件訴訟法が成立した後の最高裁判例を素材に,判例の変化を分析し,行政法理論を読み解く1冊。 .
目次.
1 行政作用と法原則
 [1]法律による行政の原理と公課
 [2]公共用物の管理と占有
 [3]住民の公証
 [4]「公法と私法」――国・地方公共団体の金銭債権・債務の消滅時効
 [5]信義則
2 私人の法的地位および行政組織の多元性 
 [6]公の施設の利用者に関する平等取扱い
 [7]外国籍公務員と民主的正統化
 [8]地方公共団体と関連団体との「距離」
3 行政の法形式と手続 
 [9]金銭債権に係る行政行為と国家賠償
 [10]違法性の承継と「公定力」――判断枠組
 [11]行政契約――公害防止協定
4 行政裁量の裁判統制
 [12]判断過程統制の構造
 [13]行政計画における諸利益のウェートづけ
 [14]行政過程と行政訴訟手続との関係
 [15]行政契約における経済性と政策的要素のウェートづけ
 [16]小括判断過程統制の諸相
5 行政訴訟(1)――処分性  
 [17]権力性――形式的根拠と実質的根拠
 [18]規律性(1)――「法的効果」の拡張?
 [19]規律性(2)――最終決定性による拡張
 [20]小括――処分性の判断枠組
 [21]具体性(1)――行政計画の場合
 [22]具体性(2)――条例の場合
6 行政訴訟(2)――原告適格・訴えの利益 
 [23]原告適格(1)――判断枠組
 [24]原告適格(2)――個別利益保護性
 [25]取消訴訟における訴えの利益
 [26]当事者訴訟における訴えの利益
7 国家賠償
 [27] 国家賠償法上の違法性(1)――判断枠組
 [28]国家賠償法上の違法性(2)――権限不行使の違法
 [29]私人の行為による国家賠償(1)――責任の根拠
 [30]私人の行為による国家賠償(2)――責任の階梯

感想
時間の関係で、[3]住民の公証、[6]公の施設の利用者に関する平等取扱いのみ読みました。
[3]住民の公証
最2小判平成21年4月17日民集63巻4号638頁 家庭裁判月報61巻9号107頁 判タ1306号207頁 判時2055号35頁
住民票不記載処分取消等請求事件
【判決要旨】 1 出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し特別区の区長がした上記記載をしない旨の応答は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
2 母がその戸籍に入る子につき適法な出生届を提出していない場合において、特別区の区長が住民である当該子につき上記母の世帯に属する者として住民票の記載をしていないことは、①上記母が出生届の提出をけ怠していることにやむを得ない合理的な理由があるとはいえないこと、②住民票の記載がされないことにより当該子に看過し難い不利益が生じているとはうかがわれないことなど判示の事情の下では、住民基本台帳法上違法ということはできず、国家賠償法上も違法ではない。
(2につき意見がある。)
[6]公の施設の利用者に関する平等取扱い
別荘住民の水道料金と差別的取扱い
最2小判平成18年7月14日民集60巻6号2369頁 判タ1222号80頁 判時1947号45頁 『地方自治判例百選(第4版)』16事件
旧高根町給水条例無効確認等請求事件
【判決要旨】 1 地方公共団体が営む水道事業の水道料金を改定する条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとされた事例
 2 地方公共団体の住民ではないがその区域内に家屋敷を有する者など住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用につき合理的な理由なく差別的取扱いをすることは、地方自治法244条3項に違反する
 3 地方公共団体が営む水道事業において別荘に係る給水契約者の基本料金を他の給水契約者の基本料金に比して大幅に増額改定した条例の規定が地方自治法244条3項に違反するものとして無効とされた事例

行き届いた詳しい説明と論証がされています。判例変更すべきと実感します。
行政法の中上級者向け。
欲を言えば著者には2010年以降の最高裁判例について続編を書いていただきたい。

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