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2024年01月30日
交差点で信号待ちをしていた先行車両の後方から赤色信号を殊更に無視し対向車線に進出し時速約20kmで普通乗用自動車を運転して同交差点に進入しようとしたため自車を右方道路から左折進行してきた自動車に衝突させ同車運転者らを負傷させた行為が刑法208条の2第2項後段の危険運転致傷罪に当たるとされた事例

交差点で信号待ちをしていた先行車両の後方から赤色信号を殊更に無視し対向車線に進出し時速約20kmで普通乗用自動車を運転して同交差点に進入しようとしたため自車を右方道路から左折進行してきた自動車に衝突させ同車運転者らを負傷させた行為が刑法208条の2第2項後段の危険運転致傷罪に当たるとされた事例

 

 

危険運転致傷,道路交通法違反,傷害被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成17年(あ)第2035号

【判決日付】      平成18年3月14日

【判示事項】      交差点で信号待ちをしていた先行車両の後方から赤色信号を殊更に無視し対向車線に進出し時速約20kmで普通乗用自動車を運転して同交差点に進入しようとしたため自車を右方道路から左折進行してきた自動車に衝突させ同車運転者らを負傷させた行為が刑法208条の2第2項後段の危険運転致傷罪に当たるとされた事例

【判決要旨】      交差点で信号待ちをしていた先行車両の後方から,赤色信号を殊更に無視し,対向車線に進出し時速約20kmで普通乗用自動車を運転して同交差点に進入しようとしたため,自車を右方道路から青色信号に従い左折して対向進行してきた自動車に同交差点入口手前において衝突させ,同車運転者らを負傷させた行為は,刑法208条の2第2項後段の危険運転致傷罪に当たる。

【参照条文】      刑法208の2-2後段

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集60巻3号363頁

 

 

事案の概要

 1 本件は,赤色信号を殊更に無視した類型の危険運転致傷罪の構成要件該当性が争われた事案であり,判旨に関連する事実関係は,次のようなものである。すなわち,被告人は,普通乗用自動車を運転し,信号機により交通整理の行われている交差点手前で,対面信号機の赤色表示に従って停止していた先行車両の後方にいったん停止したが,同信号機が青色表示に変わるのを待ちきれず,同交差点を右折進行しようとして,同信号機がまだ赤色信号を表示していたのに構うことなく発進し,対向車線に進出して,前に止まっている車両の右側方を通過し,時速約20kmの速度で自車を運転して同交差点に進入しようとした。そのため,折から右方道路から青色信号に従い同交差点を左折して対向進行してきた被害者運転の普通貨物自動車を前方約14.8mの地点に認め,急制動の措置を講じたが,間に合わず,同交差点入口手前の,本来の走行車線であれば停止線が設けられている位置付近において,同車右前部に自車右前部を衝突させ,同人らに傷害を負わせた。

 2 刑法208条の2の危険運転致死傷罪は,自動車運転による死傷事犯の実情にかんがみ,事案の実態に即した処分及び科刑を行うため,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で四輪以上の自動車を走行させるなど,一定の悪質かつ危険な運転行為をして人を死傷させた者を,暴行により人を死傷させた者に準じて処罰する犯罪類型として,平成13年の刑法改正で新設されたものであり,その罪質については,故意の危険運転行為により,意図しない人の死傷の結果が生じたときに成立する結果的加重犯に類する犯罪類型であると説かれている(井上宏「自動車運転による死傷事犯に対する罰則の整備(刑法の一部改正)等について」ジュリ1216号39頁)。

 本件は,刑法208条の2において危険運転行為として類型化されたもののうち,赤色信号を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し,よつて,人を死傷させたという,同条2項後段の赤色信号殊更無視類型の危険運転致傷罪の事案であるが,具体的に争点とされたのは,次の2点である。

第1点は,1,2審において争われた問題であるが,時速約20kmで進行したことが「交通の危険を生じさせる速度」(以下「危険速度」という。)といえるかという点である。

第2点は,上告審において争われた問題であり,被告人が自車を対向車線に進出させて同車線上で事故が発生しており,事故の直接的な原因は対向車線上に進出したことであって,赤色信号殊更無視の危険運転行為によるものとして因果関係を肯定することができるかという点である。

 3 本決定は,職権で,前記1のような事実関係を示した上,赤色信号殊更無視類型の危険運転致傷罪の成立を認めた原判断を是認したものであり,判文に照らせば,上記2つの問題点につき,本件事案の下で,被告人車の速度時速約20kmが危険速度と認められること,また,被告人が自車を対向車線に進出させ,同車線上で被害車両と衝突したとしても,これが赤色信号殊更無視の危険運転行為によるものと認められることを明らかにしたものと解される。

 

 

 

平成二十五年法律第八十六号

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

(危険運転致死傷)

第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。

一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為

六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為

七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

 

 

 

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