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2023年10月04日
公立大学学生の退学処分は、いわゆる行政処分か

公立大学学生の退学処分は、いわゆる行政処分か

 

 

放学処分取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和28年(オ)第525号

【判決日付】      昭和29年7月30日

【判示事項】      公立大学学生の退学処分は、いわゆる行政処分か

             公立大学学生の懲戒処分と裁判権

【判決要旨】      公立大学の学長がその学生に退学を命ずる行為は、行政事件訴訟特例法第1条にいう行政処分に当る。

             公立大学の学生の行為に対し懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶかを決定することは、この点の判断が社会観念上著しく妥当を欠くものと認められる場合を除き原則として、懲戒権者としての学長の裁量に任されているものと解するのが相当であるが、懲戒処分が全く事実の基礎を欠くものであるかどうかの点は、裁判所の審判権に服する。

【参照条文】      行政事件訴訟特例法1

             学校教育法11

             学校教育法施行規則13

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集8巻7号1463頁

 

 

行政事件訴訟法

(原告適格)

第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

 

 

 

学校教育法

第十三条 第四条第一項各号に掲げる学校が次の各号のいずれかに該当する場合においては、それぞれ同項各号に定める者は、当該学校の閉鎖を命ずることができる。

一 法令の規定に故意に違反したとき

二 法令の規定によりその者がした命令に違反したとき

三 六箇月以上授業を行わなかつたとき

② 前項の規定は、市町村の設置する幼稚園に準用する。この場合において、同項中「それぞれ同項各号に定める者」とあり、及び同項第二号中「その者」とあるのは、「都道府県の教育委員会」と読み替えるものとする。

 

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告理由第一点について。

 大学の学生に対する退学処分は、教育上の必要に基く懲戒行為として行われるものであるが、これにより学生としての法的地位を消滅させる効果を生ずるものである以上、なんらの法的効果を伴わない単なる事実上の作用としての懲戒行為と同視すべきでないことはいうまでもない。そして、公立大学の学生に対する退学処分も私立大学の学生に対する退学処分も、ともに、教育施設としての学校の内部規律を維持し教育目的を達成するために認められる懲戒作用である点において、共通の性格を有することは所論のとおりである。

 しかし、国立および公立の学校は、本来、公の教育施設として、一般市民の利用に供されたものであり、その学生に退学を命ずることは、市民としての公の施設の利用関係からこれを排除するものであるから、私立大学の学生に退学を命ず行為とは趣を異にし、行政事件訴訟特例法第一条の関係においては、行政庁としての学長の処分に当るものと解するのが相当である。

 もつとも、学長が学生の行為をとらえて懲戒処分を発動するに当り、右の行為が懲戒に値するものであるかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決するについては、当該行為の軽重のほか、本人の性格および平素の行状、右行為の他の学生に与える影響、懲戒処分の本人および他の学生におよぼす訓戒的効果等の諸般の要素をしんしゃくする必要があり、これらの点の判断は、学内の事情に通ぎようし直接教育の衝に当るものの裁量に任すのでなければ、到底適切な結果を期待することはできない。それ故、学生の行為に対し、懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶかを決定することは、この点の判断が社会観念上著しく妥当を欠くものと認められる場合を除き、原則として、懲戒権者としての学長の裁量に任されているものと解するのが相当である。

 しかし、このことは、学長がなんらの事実上の根拠に基かないで懲戒処分を発動する権能を有するものと解することの根拠となるものではなく、懲戒処分が全く真実の基礎を欠くものであるかどうかの点は、裁判所の審判権に服すべきことは当然である。

 原審が退学処分を行政処分と解し、上告人に対する退学処分が全く事実の基礎を欠くものとして違法と判断したことは正当であつて、論旨は採用に値しない。

 その余の論旨はすべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律「(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、また同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第三小法廷

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