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2023年01月07日
従業員持株会の注意点

従業員持株会の注意点

1 実態のない従業員持株会

 従業員持株会は,法的には民法上の組合ですから従業員がその旨の組合の規約を作ることにより設立することができます(民法667条)。

従業員持株会は前述の通り,節税効果が期待できますが,実態のない従業員持株会である場合には,税務調査において否認される可能性があります。そこで,規約を作るだけでなく,実際に理事会および総会を開催し,議事録を作るなど活動実体がある必要があります。


2 議決権行使の問題

 従業員持株会の議決権は理事長が行使します。ただし,会員は各自の持分に相当する株式の議決権の行使について,理事長に対し各株主総会ごとに特別の指示ができる仕組みになっていることが多いです。この場合,会員の議決権の行使の独立性が確保されていると解されないこともないですが,実際には,理事長に会社の総務部長または人事部長が就任している場合,会社の支配下に置かれ,取締役の意向に反して議決権を行使することが期待できない場合があります。このような場合,従業員持株会が子会社と評価されるおそれがあります(会社法2条3号,会社法施行規則3条1項3項)。もし,子会社に該当することになれば,従業員持株会はそもそも株式を保有することができなくなります(会社法135条)。


3 売渡強制条項

 非公開会社で従業員持株会が設置される場合,従業員が退職時に従業員持株会に対して取得価額と同額で株式を譲渡する旨の約定が置かれることが多く,この約定が会社法127条の株式譲渡自由の原則および民法90条の公序良俗に反して無効ではないか争われてきました。

 現在の実務を支える根拠となっている判例が最判平成7・4・25裁判集民175号91頁です。この判例は,会社と従業員株主との間の株式譲渡契約の有効性を認めました。

 本件株式譲渡契約の有効性は,以下の3つの問題が含まれていました。

(1)譲渡の相手方が,取締役会の指定する者に特定される点

 会社は譲渡制限株式について,譲渡承認をしない場合,自らこれを買い取ることもできますが(会社法140条1項),指定買取人に買い取らせることもできます(会社法140条4項)。したがって,会社法上,株式を譲渡しようとする株主の相手方選択の利益は重視されてないといえます。そこで,譲渡の相手方が会社が指定する者になったとしても会社法上,問題はないと考えらえます。このことは,譲渡の相手方が従業員持株会に指定される場合であっても同様に考えられます。

(2)退職という一定の事由の発生により株式の売渡しが強制される点

 退職という一定の事由の発生により株式が強制的に売り渡される点についても,会社法127条の趣旨に反しないと考えられます。なぜなら,非公開会社においては株主の投下資本回収にむしろ寄与する面があると考えられるためです(江頭憲治郎『株式会社法第3版』235頁)。

(3)売却価格が取得価額である点

 従業員持株会への売渡しの最大の問題が,この売却価格の問題です。売却価格を当該株式の取得時の価額とすると,株主のキャピタル・ゲイン取得を完全に否定することになります。そのため,その有効性が争われてきました。判例は,取得価額による買戻しを有効と認めます。その根拠は,従業員持株会入会時の従業員の事前の了解,制度維持の必要性のほか,比較的高率の剰余金の配当が行われていること,株式の時価算定の困難性が挙げられます。

 しかし,近時,配当性向が100%に近い特別な場合を除き,実質的に株主の投下資本の回収を著しく妨げるものとして,その有効性に疑問を投げかける見解も有力です(江頭憲治郎『株式会社法第3版』236頁)。退職時に売渡しが強制される株式の評価額が理事会の一任とされていた場合に,その裁量が合理的な範囲を逸脱すると認定され,合理的な価額算定を要求した裁判例として札幌地判平成14・2・15労働判例837号66頁があります。もはやキャピタル・ゲインを全く無視した,一方的な規約による清算は成り立たず,合理的な計算が求められるとする説があります(牧口靖一・齋藤孝一『事業承継に活かす従業員持株会の法務・税務』215頁)。


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