交通事故・相続・債権回収でお困りの方はお気軽にご相談下さい

法律相談のご予約・お問い合わせはこちらまで03−6904−7423
新着情報
2022年09月09日
GPS事件最高裁令和2年7月30日

 

この2つの最高裁第1小法廷判決は罪刑法定主義(憲法31条~39条)に沿ったものです。

その後、ストーカー規制法2条(定義)および3条(つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして不安を覚えさせることの禁止)は、これらの無罪判決を受けて、GPSは「見張り」に含まれる等の改正がされました。

やはり、裁判長裁判官 山口 厚(元・東京大学教授、元・早稲田大学大学院法務研究科教授、東京大学名誉教授)は、偉大ですね。

 

 

 

有印私文書偽造,同行使,ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成30年(あ)第1528号

【判決日付】      令和2年7月30日

【判示事項】      ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成28年法律第102号による改正前のもの)2条1項1号にいう「住居等の付近において見張り」をする行為の意義

【判決要旨】      ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成28年法律第102号による改正前のもの)2条1項1号にいう「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには,機器等を用いる場合であっても,好意の感情等を抱いている対象である特定の者又はその者と社会生活において密接な関係を有する者の「住居等」の付近という一定の場所において同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要する。

【参照条文】      ストーカー行為等の規制等に関する法律(平28法102号改正前)2-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集74巻4号476頁

             裁判所時報1749号1頁

             判例タイムズ1482号61頁

             判例時報2478号149頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      判例秘書ジャーナルHJ200028

             警察学論集74巻1号165頁

             ジュリスト1554号88頁

             ジュリスト1557号128頁

             法律のひろば74巻2号52頁

             家庭の法と裁判31号47頁

             刑事法ジャーナル67号183頁

             刑事法ジャーナル71号17頁

             法律時報94巻2号147頁

             警察公論76巻11号114頁

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 検察官の上告趣意は,原判決のストーカー行為等の規制等に関する法律(平成28年法律第102号による改正前のもの。以下「ストーカー規制法」という。)2条1項1号所定の「見張り」に関する判断は,所論引用の福岡高等裁判所平成29年(う)第175号同年9月22日判決・高等裁判所刑事裁判速報集平成29年282頁と相反するとともに,判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり,これを破棄しなければ著しく正義に反するというのである。

 原判決は,被告人が,別居中の当時の妻(以下,単に「妻」という。)が使用する自動車にGPS機器をひそかに取り付け,その後多数回にわたって同車の位置情報を探索して取得した行為は,ストーカー規制法2条1項1号の「通常所在する場所」の付近における「見張り」に該当しないとして,上記行為に同号を適用した第1審判決には法令適用の誤りがある旨の判断を示している。

 この判断は,同様の事案において,同号所定の「見張り」該当性を肯定した所論引用の判例と相反する判断をしたものというべきである。

 しかしながら,ストーカー規制法2条1項1号は,好意の感情等を抱いている対象である特定の者又はその者と社会生活において密接な関係を有する者に対し,「住居,勤務先,学校その他その通常所在する場所(住居等)の付近において見張り」をする行為について規定しているところ,この規定内容及びその趣旨に照らすと,「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには,機器等を用いる場合であっても,上記特定の者等の「住居等」の付近という一定の場所において同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要するものと解するのが相当である。そして,第1審判決の認定によれば,被告人は,妻が上記自動車を駐車するために賃借していた駐車場においてGPS機器を同車に取り付けたが,同車の位置情報の探索取得は同駐車場の付近において行われたものではないというのであり,また,同駐車場を離れて移動する同車の位置情報は同駐車場付近における妻の動静に関する情報とはいえず,被告人の行為は上記の要件を満たさないから,「住居等の付近において見張り」をする行為に該当しないとした原判決の結論は正当として是認することができる。

 したがって,刑訴法410条2項により,所論引用の判例を変更し,原判決を維持するのを相当と認めるから,所論の判例違反は,結局,原判決破棄の理由にならない。

 よって,同法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山口 厚 裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 深山卓也)

 

 

ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成30年(あ)第1529号

【判決日付】      令和2年7月30日

【判示事項】      ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項1号にいう「住居等の付近において見張り」をする行為の意義

【参照条文】      ストーカー行為等の規制等に関する法律2-1

【掲載誌】        最高裁判所裁判集刑事328号19頁

             裁判所時報1749号2頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      判例秘書ジャーナルHJ200028

             警察学論集74巻1号165頁

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 検察官の上告趣意は,原判決のストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」という。)2条1項1号所定の「見張り」に関する判断は,所論引用の福岡高等裁判所平成29年(う)第175号同年9月22日判決・高等裁判所刑事裁判速報集平成29年282頁と相反するとともに,判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり,これを破棄しなければ著しく正義に反するというのである。

 原判決は,被告人が,共犯者と共謀の上,多数回にわたり,元交際相手が使用している自動車にGPS機器をひそかに取り付け,同車の位置を探索して同人の動静を把握した行為は,ストーカー規制法2条1項1号所定の「見張り」に該当しないのに,これに該当するとした第1審判決には法令適用の誤りがある旨の判断を示している。

 この判断は,同様の事案において,同号所定の「見張り」該当性を肯定した所論引用の判例と相反する判断をしたものというべきである。

 しかしながら,ストーカー規制法2条1項1号は,好意の感情等を抱いている対象である特定の者又はその者と社会生活において密接な関係を有する者に対し,「住居,勤務先,学校その他その通常所在する場所(住居等)の付近において見張り」をする行為について規定しているところ,この規定内容及びその趣旨に照らすと,「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには,機器等を用いる場合であっても,上記特定の者等の「住居等」の付近という一定の場所において同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要するものと解するのが相当である。そして,原判決の認定によれば,被告人は,元交際相手が利用していた美容室の駐車場等においてGPS機器を上記自動車に取り付けたが,同車の位置の探索は同駐車場等の付近から離れた場所において行われたというのであり,また,同駐車場等を離れて移動する同車の位置情報は同駐車場等の付近における同人の動静に関する情報とはいえず,被告人の行為は上記の要件を満たさないから,「住居等の付近において見張り」をする行為に該当しないとした原判決の結論は正当として是認することができる。

 したがって,刑訴法410条2項により,所論引用の判例を変更し,本件を第1審裁判所に差し戻した原判決を維持するのを相当と認めるから,所論の判例違反は,結局,原判決破棄の理由にならない。

 よって,同法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山口 厚 裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 深山卓也)

 

 

 

 

[根拠条文]

日本国憲法

昭和二十一年十一月三日憲法

第三十一条  何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条  何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第三十三条  何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第三十四条  何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。 又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十五条  何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

2  捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第三十六条  公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

第三十七条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

2  刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

3  刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。 被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第三十八条  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

2  強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

3  何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三十九条  何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。 又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四十条  何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

 

 

 

ストーカー行為等の規制等に関する法律

平成十二年五月二十四日法律第八十一号

(定義)

第二条  この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

一  つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。

二  その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

三  面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。

四  著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

五  電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。

六  汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

七  その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

八  その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。

2  前項第五号の「電子メールの送信等」とは、次の各号のいずれかに掲げる行為(電話をかけること及びファクシミリ装置を用いて送信することを除く。)をいう。

一  電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。次号において同じ。)の送信を行うこと。

二  前号に掲げるもののほか、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用する行為をすること。

3  この法律において「位置情報無承諾取得等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

一  その承諾を得ないで、その所持する位置情報記録・送信装置(当該装置の位置に係る位置情報(地理空間情報活用推進基本法(平成十九年法律第六十三号)第二条第一項第一号に規定する位置情報をいう。以下この号において同じ。)を記録し、又は送信する機能を有する装置で政令で定めるものをいう。以下この号及び次号において同じ。)(同号に規定する行為がされた位置情報記録・送信装置を含む。)により記録され、又は送信される当該位置情報記録・送信装置の位置に係る位置情報を政令で定める方法により取得すること。

二  その承諾を得ないで、その所持する物に位置情報記録・送信装置を取り付けること、位置情報記録・送信装置を取り付けた物を交付することその他その移動に伴い位置情報記録・送信装置を移動し得る状態にする行為として政令で定める行為をすること。

4  この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第一項第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)又は位置情報無承諾取得等を反復してすることをいう。

(つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして不安を覚えさせることの禁止)

第三条  何人も、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない

 

 

 

 

 

top

法律相談のご予約・お問い合わせはこちらまで03−6904−7423