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2022年09月08日
株式併合によるMBO後の残存少数株主のスクイーズアウト

 

株主総会決議取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/令和3年(ネ)第840号

【判決日付】      令和3年9月21日

【判示事項】      1 議決権行使の基準日を定めなかった場合における、招集通知の発送後、その株主総会の開催までに株式譲渡により株式を取得した株主に対する招集通知発送の要否

             2 会社法181条1項の通知と同法180条2項各号の事項が記載された招集通知の送付

             3 会社法施行規則33条の9第2号イと自己株式の消却

             4 先行株式併合と日時が近接し、株式併合の目的を同じくする後行株式併合における端数処理交付金額

             5 代理人の氏名等が白紙である委任状に基づく議決権行使の効力

             6 株主名簿に株式を取得した日として記載される日

【判決要旨】      1 株主総会を開催するに際して議決権行使の基準日を定めなかった場合、株主総会の招集通知は、その発送の時点において株主名簿に記載または記録されている株主に対して発送すれば足り、招集通知の発送後、その株主総会の開催までに株式譲渡により株式を取得した株主がいたとしても、当該株主に改めて招集通知を発送する必要はない。

             2 会社法180条2項各号の事項が記載された招集通知の送付をもって同法181条1項の通知をしているといえる。

             3 自己株式の消却は、「会社財産の状況に重要な影響を与える事象」(会社法施行規則33条の9第2号イ)に当たらない。

             4 先行株式併合において客観的にみて公正な手続が実質的に履践された上で端数処理交付見込額が定められている場合には、先行株式併合と日時が近接し、株式併合の目的を同じくする後行株式併合においても、特段の事情がない限り先行株式併合における手続で定められた端数処理交付金額を尊重すべきであるとした事例。

             5 株主総会において議決権の代理行使を委任状によって行う場合、あらかじめ議案として示された内容について、賛否の意思が示されていれば、受任者(代理人)の住所、氏名が白紙であっても無効ではなく、受任者はその委任者の意思どおりに議決権を有効、適法に行使したものと解される。

             6 株主名簿に株式を取得した日として記載されるのは、一般に名義書換請求を会社が受け付けた(受理した)日である。

【参照条文】      会社法831

             会社法299

             会社法369-2

【掲載誌】        金融・商事判例1639号13頁

 

       主   文

 

 1 本件控訴をいずれも棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 (主位的請求)

 被告の令和元年5月8日開催の臨時株主総会において、承認決議された原判決別紙決議一覧1及び2の各決議を取り消す。

(予備的請求)

 被控訴人の令和元年5月8日開催の臨時株主総会において、承認決議された原判決別紙決議一覧1及び2の各決議が無効であることを確認する。

第2 事案の概要(以下、略称は原判決の例による。)

1 本件は、被控訴人の株主であった控訴人が、被控訴人の令和元年5月8日付け本件株主総会における本件各決議について、主位的に取消しを求めるとともに、予備的に無効であることの確認を求める事案である。

 原審は、本件各決議に取消事由及び無効事由はいずれも認められないとして、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人はこれを不服として控訴を提起した。

2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、後記第3の2における控訴人の当審における補充主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」(原判決2頁3行目から10頁21行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、後記2のとおり付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」(原判決10頁22行目から19頁8行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

2 控訴人の当審における補充主張について

 (1) 控訴人は、当審において、甲野以外の株主ら作成の委任状(乙27の1~4)には権限を委任する相手である代理人の住所、氏名の記載がなく無効であり、本件株主総会において株式会社A、株式会社B、株式会社C及び株式会社Dはいずれも議決権を行使していないと主張する。

 しかしながら、株主総会において議決権の代理行使を委任状によって行う場合、本件のように、予め議案として示された内容について、賛否の意思が示されていれば、受任者(代理人)の住所、氏名が白紙であっても無効ではなく、受任者はその委任者の意思どおりに議決権を有効、適法に行使したものと解するのが相当である。そうすると、前記引用の原判決の「第2 事案の概要」の1(8)及び「第3 当裁判所の判断」の2(1)に認定説示のとおり、本件において、前記の株式会社A、株式会社B、株式会社C及び株式会社Dは本件株主総会に出席した乙山秋郎を代理人として各委任状(乙27の1~4)に記載された各議案に対する賛否のとおり議決権を行使したものと認められるから、控訴人の上記主張は採用することができない。

 (2) また、控訴人は、甲野から控訴人への株式の名義書換請求が完了したのは令和元年5月17日であり、本件株主総会が開催された同月8日の時点において同書換作業は完了していなかったから、本件各決議の議決権を行使したのは甲野であって控訴人ではない旨主張する。

 しかしながら、株式が譲渡された場合、株主名簿には「株主が株式を取得した日」が記載されるところ(会社法121条3号)、株式を取得した日として記載されるのは、一般に名義書換請求を会社が受け付けた(受理した)日と解され、これを本件についてみると、前記引用の原判決の「第2 事案の概要」の1(7)に認定のとおり、甲野から控訴人に対する株主の名義書換請求を被控訴人が受け付けた(受理した)日は令和元年5月7日と認められるから(甲1、乙40)、本件各決議の議決権を行使したのは甲野個人ではなく控訴人であると認められる。

 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。

3 以上によれば、控訴人の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

            裁判長裁判官 定塚 誠

               裁判官 菅野正二朗

 裁判官小津亮太は転補のため署名押印することができない。

            裁判長裁判官 定塚 誠

 

 

 

[根拠条文]

 

会社法

(株主に対する通知等)

第百二十六条1項 株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

 

(株式の併合)

第百八十条 株式会社は、株式の併合をすることができる。

2 株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 併合の割合

二 株式の併合がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)

三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類

四 効力発生日における発行可能株式総数

3 前項第四号の発行可能株式総数は、効力発生日における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

4 取締役は、第二項の株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

(株主に対する通知等)

第百八十一条 株式会社は、効力発生日の二週間前までに、株主(種類株式発行会社にあっては、前条第二項第三号の種類の種類株主。以下この款において同じ。)及びその登録株式質権者に対し、同項各号に掲げる事項を通知しなければならない。

2 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

 

(反対株主の株式買取請求)

第百八十二条の四 株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式のうち一株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる。

2 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。

一 第百八十条第二項の株主総会に先立って当該株式の併合に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)

二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主

3 株式会社が株式の併合をする場合における株主に対する通知についての第百八十一条第一項の規定の適用については、同項中「二週間」とあるのは、「二十日」とする。

4 第一項の規定による請求(以下この款において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

5 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし、当該株券について第二百二十三条の規定による請求をした者については、この限りでない。

6 株式買取請求をした株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。

7 第百三十三条の規定は、株式買取請求に係る株式については、適用しない。

 

 

(株主総会の招集の通知)

第二百九十九条 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。

2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。

一 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合

二 株式会社が取締役会設置会社である場合

3 取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。

4 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

 

 

(取締役会の決議)

第三百六十九条 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。

2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。

3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

5 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

 

 

(株主総会等の決議の取消しの訴え)

第八百三十一条 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。

一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。

二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。

三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。

2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。

 

 

 

平成十八年法務省令第十二号

会社法施行規則

会社法(平成十七年法律第八十六号)及び会社法施行令(平成十七年政令第三百六十四号)の規定に基づき、会社法施行規則を次のように定める。

 

第三節の三 株式の併合

(株式の併合に関する事前開示事項)

第三十三条の九 法第百八十二条の二第一項に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。

一 次に掲げる事項その他の法第百八十条第二項第一号及び第三号に掲げる事項についての定めの相当性に関する事項

イ 株式の併合をする株式会社に親会社等がある場合には、当該株式会社の株主(当該親会社等を除く。)の利益を害さないように留意した事項(当該事項がない場合にあっては、その旨)

ロ 法第二百三十五条の規定により一株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における次に掲げる事項

(1) 次に掲げる事項その他の当該処理の方法に関する事項

(i) 法第二百三十五条第一項又は同条第二項において準用する法第二百三十四条第二項のいずれの規定による処理を予定しているかの別及びその理由

(ii) 法第二百三十五条第一項の規定による処理を予定している場合には、競売の申立てをする時期の見込み(当該見込みに関する取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会。(iii)及び(iv)において同じ。)の判断及びその理由を含む。)

(iii) 法第二百三十五条第二項において準用する法第二百三十四条第二項の規定による処理(市場において行う取引による売却に限る。)を予定している場合には、売却する時期及び売却により得られた代金を株主に交付する時期の見込み(当該見込みに関する取締役の判断及びその理由を含む。)

(iv) 法第二百三十五条第二項において準用する法第二百三十四条第二項の規定による処理(市場において行う取引による売却を除く。)を予定している場合には、売却に係る株式を買い取る者となると見込まれる者の氏名又は名称、当該者が売却に係る代金の支払のための資金を確保する方法及び当該方法の相当性並びに売却する時期及び売却により得られた代金を株主に交付する時期の見込み(当該見込みに関する取締役の判断及びその理由を含む。)

(2) 当該処理により株主に交付することが見込まれる金銭の額及び当該額の相当性に関する事項

二 株式の併合をする株式会社(清算株式会社を除く。以下この号において同じ。)についての次に掲げる事項

イ 当該株式会社において最終事業年度の末日(最終事業年度がない場合にあっては、当該株式会社の成立の日)後に重要な財産の処分、重大な債務の負担その他の会社財産の状況に重要な影響を与える事象が生じたときは、その内容(備置開始日(法第百八十二条の二第一項各号に掲げる日のいずれか早い日をいう。次号において同じ。)後株式の併合がその効力を生ずる日までの間に新たな最終事業年度が存することとなる場合にあっては、当該新たな最終事業年度の末日後に生じた事象の内容に限る。)

ロ 当該株式会社において最終事業年度がないときは、当該株式会社の成立の日における貸借対照表

三 備置開始日後株式の併合がその効力を生ずる日までの間に、前二号に掲げる事項に変更が生じたときは、変更後の当該事項

(株式の併合に関する事後開示事項)

第三十三条の十 法第百八十二条の六第一項に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。

一 株式の併合が効力を生じた日

二 法第百八十二条の三の規定による請求に係る手続の経過

三 法第百八十二条の四の規定による手続の経過

四 株式の併合が効力を生じた時における発行済株式(種類株式発行会社にあっては、法第百八十条第二項第三号の種類の発行済株式)の総数

五 前各号に掲げるもののほか、株式の併合に関する重要な事項

 

 

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