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新着情報
2022年04月15日
『職務行為基準説に関する裁判例』をアマゾンで出版しました。

職務行為基準説に関する裁判例を網羅しています。

職務行為基準説は、判例の国家賠償法1条の違法性判断基準であり、公務員として職務上尽くすべき注意義務を懈怠することをいう。判例は、単に公権力発動要件を充足するのみならず、過失の要件となる公務員の予見可能性なども読み込むため、違法性と過失を一元的に判断する考え方に親しみやすい。

規制権限の不行使に関して、判例は、おおむね、身体財産に対する危害については違法性を肯定し、国家賠償法1条の損害賠償責任を肯定します。例えば、砲弾事件、ナイフ事件、じん肺事件、工場労働者アスベスト(石綿)事件、建材アスベスト事件、療養が必要な児童の親に対する援助制度についての市職員の教示義務違反事件・大阪高裁平成26年11月27日、水俣病待たせ賃事件・最高裁平成3年4月26日。

憲法上の権利の場合も、違法性を肯定しやすい。在宅投票制度の廃止(違法性を否定)・最高裁昭和60年11月21日、在外邦人の投票制度の立法不作為(違法性を肯定)・最高裁大法廷平成17年9月14日、差押えの特別送達について郵便法の免責条項につき違憲判決・最高裁大法廷平成14年9月11日。

しかし、財産権の危害については、違法性を否定する場合が多いでしょう。財産権も憲法上の権利ですが、生命身体や自由権と比較して、保護は劣ります。財産権については、国・地方公共団体とは別に、加害者から損害賠償を受ければ、補てん可能だからです。例として、宅地建物取引業者免許事件・最高裁平成元年11月24日、耐震偽装を看過した建築確認事件・最高裁平成25年3月26日(ただし、いずれも加害者は倒産)、不法残留外国人健康保険事件。

例外として、抵当証券事件・大阪高裁判決は、違法性を肯定しました。無価値の土地について抵当証券が発行され、購入した被害者が多数いました。抵当証券法が廃止される前の事件です。抵当証券は、その抵当権が設定された土地の価値を財務局に届け出る仕組みになっていたので、無価値であることを看過した国の損害賠償責任を肯定しやすく、かつ、加害者である法人は倒産していたからです。

目次

第1章  土地区画整理事業の施行者が仮換地上の建物の移転除却を怠つた不作為と土地所有者に対する損害賠償義務

第2章  無罪判決の確定と捜査及び訴追の違法性

第3章  裁判官がした争訟の裁判につき国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があつたものとして国の損害賠償責任が肯定される要件

第4章  警察官がナイフの所持者からこれを提出させて一時保管の措置をとらなかつたことが違法とされた事例

第5章  海浜に打ち上げられた旧陸軍の砲弾により人身事故が生じた場合に、警察官においてその回収等の措置を採らなかったことが違法であるとされた事例

第6章  警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第3者が損害を被った場合において、右追跡行為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるというための要件

第7章  無罪判決が確定した場合における公訴提起の違法性の有無の判断材料

第8章  宅地建物取引業法所定の免許基準に適合しない免許の付与ないし更新をした知事の行為と国家賠償法1条1項の違法性

第9章  1 再審による無罪判決の確定と裁判の違法性

2 再審による無罪判決の確定と公訴の提起及び追行の違法性

第10章 監獄法施行規則(平成3年改正前)120条及び124条の各規定の法適合性

第11章 逮捕状の更新が繰り返されている時点における捜査機関又は令状発付裁判官の判断の違法を理由とする国家賠償請求の許否

第12章 私文書偽造・同行使罪で起訴され無罪判決が確定した者からの損害賠償請求につき、原判決には公訴提起の違法性について十分な検討をせず、その具体的判断をしないまま国の国家賠償法1条に基づく責任を是認した違法があるとして、破棄差戻された事例

第13章 厚生大臣による医薬品の日本薬局方への収載及び製造の承認等の行

第14章 司法警察員による被疑者の留置についての国家賠償法1条1項所定の違法性の判断基準

第15章 国会議員が国会の質疑等の中でした発言と国家賠償責任

第16章 郵便法68条及び73条のうち書留郵便物について不法行為に基づく国の損害賠償責任を免除し又は制限している部分と憲法17条

第17章 債務整理事務の委任を受けた弁護士が委任事務処理のため委任者から受領した金銭等を実質的な原資として開設した貯蓄預金口座にかかる預金債権を委任者の財産として滞納処分としての差押えをしたことに国家賠償法1条1項の違法があるとは言えないとされた事例

第18章 戸籍法施行規則60条に定める文字以外の文字を用いて子の名を記載したことを理由とする市町村長の出生届の不受理処分に対する不服申立て事件において家庭裁判所が当該文字が常用平易であることを理由に当該出生届の受理を命ずることの可否

第19章 我が国に不法に残留している外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するとされた事例

第20章 通商産業大臣が石炭鉱山におけるじん肺発生防止のための鉱山保安法上の保安規制の権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例

第21章 国が水俣病による健康被害の拡大防止のためにいわゆる水質2法に基づく規制権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例

第22章 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官が同庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として接見の申出を許否することができる場合

第23章 国の担当者が,原爆医療法及び原爆特別措置法の解釈を誤り,被爆者が国外に居住地を移した場合に健康管理手当等の受給権は失権の取扱いとなる旨定めた通達を作成,発出し,これに従った取扱いを継続したことが,国家賠償法1条1項の適用上違法であり,当該担当者に過失があるとされた事例

第24章 我が国において既に頒布され,販売されているわいせつ表現物を関税定率法(平成17年改正前)21条1項4号による輸入規制の対象とすることと憲法21条1項

第25章 固定資産の価格を過大に決定されたことによって損害を被った納税者が地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経ていない場合における国家賠償請求の許否

第26章 市立小学校又は中学校の教諭らが勤務時間外に職務に関連する事務等に従事していた場合において,その上司である各校長に上記教諭らの心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務に違反した過失があるとはいえないとされた事例

第27章.建築主は建築主事の建築確認を違法として国家賠償法上の損害賠償を求めることができるか。

第28章 死刑確定者又はその再審請求のために選任された弁護人が再審請求に向けた打合せをするために刑事施設の職員の立会いのない面会の申出をした場合にこれを許さない刑事施設の長の措置が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合

第29章 労働大臣が石綿製品の製造等を行う工場又は作業場における石綿関連疾患の発生防止のために労働基準法(昭和47年法律第57号による改正前のもの)に基づく省令制定権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例

第30章 保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人等からあった場合に,その旨を未決拘禁者に告げないまま,保護室収容を理由に面会を許さない刑事施設の長の措置が,国家賠償法上違法となる場合

第31章 厚生労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが屋外の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえないとされた事例

第32章 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しHBe抗原陽性慢性肝炎の発症,鎮静化の後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害につきHBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法(平成29年改正前)724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例

第33章 労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが屋内の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例

第34章 財務局長が抵当証券業の規制等に関する法律8条1項に基づいてした抵当証券業者に対する更新登録が,本件の具体的事実関係の下では,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠き,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとして,国が,これにより被害を受けた者の財産的損害の賠償責任を負うとされた事例

第35章 社会保障制度の運用に当たる窓口の担当者は、条理に基づき、相談者に対し相談内容等に関連すると思われる制度について適切な教示を行い、また必要に応じ、不明な部分につき更に事情を聴取し、あるいは資料の追完を求めるなどして該当する制度の特定に努めるべき職務上の法的義務(教示義務)を負っている。

 

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